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車上荒らしをした犯人から、盗まれたお金を取り返せないか?

車上荒らしをした犯人から、盗まれたお金を取り返せないか?

車上荒らしは、警察の統計上は車上ねらいとして扱っています。ここでも、便宜、車上ねらいという表現をします。東京都の平成16年度の車上ねらいの認知件数は、2万105件でした。被害総額は、約13億9454万円で、その内、現金が約5億4687万円でした。したがって、1件当たりの被害額は、約7万円になります。
 では、この被害額がどれくらい回復できているのでしょうか。同じ年度の、検挙件数は3136件であり、認知件数の15%程度です。そして、回復額が約753万円でしたので、回復率は、わずか0.5%でした。
 この統計から、盗まれたお金を実際に取り返すのは、かなり困難であることがわかります。
 では、盗まれた人は泣き寝入りをするしかないのでしょうか。そんなことはありません。犯人を捕まえることは警察にお任せするしかありませんが、捕まった犯人から盗んだ現金や物に代えて損害の賠償をしてもらうことができます。
 犯人の量刑は、被害がどれくらい回復されたかということで影響が出ます。まずは、一括払いをすることにより刑事裁判に有利となることを十分説明して、一括払いでの交渉をすることです。この段階で、犯人又はその親族などから、賠償金の申し出があることもあります。しかし、犯人又は親族に賠償能力がなく、一括払いできないこともあるでしょう。
 分割の申し出の場合は、口先だけかもしれませんが、ない袖は振れませんので、分割に応じざるを得ない場合もあります。分割払いの場合は、将来、支払を停止した場合に備える必要があります。保証人を確保することと、公正証書を作成することなどです。
 親族は原則として、賠償義務はありませんので、親族に賠償を求めたり、保証人になることを強要はできません。しかし、親族から賠償の申し出をしてきた場合、犯人の賠償の連帯保証人となってもらうのがよいでしょう。
 また、公正証書は、犯人や連帯保証人が支払をしない場合、強制執行を受諾することが記載されていれば、訴訟をするまでもなく、強制執行ができるので、強力な武器となります。
 いずれにしろ、犯人側からの申し出がない場合でも、できるだけ早く交渉をして被害の回復を図る努力をしましょう。長引けば長引くほど申し訳なかったという感情は薄れるものです。
 次に、犯人と交渉ができなかったり、うまくいかなかったときの対応です。
 1件当たりの平均損害額が約7万円であることを考えると、裁判上の請求は躊躇するところでしょうが、強制的に回収する方法は他になく、どうしても回収するというのであれば、調停、少額訴訟、通常訴訟をする方法があります。中でも、相手方の実情に応じた返済方法を協議できる利点がある調停を考えてみてはどうでしょうか。強制執行は、最後の手段ですが、車上ねらいをする輩に、押さえるべき資産があることは希でしょう。強制執行をせずに被害回復を図りたいものです。
 統計上は、被害の回復額が0.5%しかありません。ほぼ返らないと考えて、車上ねらいにあわないような対策こそが重要です。無施錠の車が最大の標的です。ドアに鍵を掛け、車の中に財布を置かないことです。くれぐれもご用心を。

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