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獣医の医療ミスでペットが死亡、損害賠償を請求したい

獣医の医療ミスでペットが死亡、損害賠償を請求したい

最近は空前のペットブームと言われています。それにともない、ペットをめぐる法的問題も増加の傾向にあります。
 そもそもペットとは法的にはどのような位置づけなのでしょうか。ペットを愛する方々には申し訳ありませんが、ペットは、法的にはあくまで「物」であるとされています。すなわち、法的には本や鉛筆などとまったく同様の扱いということです。日本の民法では権利の主体となることができるのは「人」しか認められていません(これを「権利能力」といいます)。「人」ではないペットはあくまで「物」として権利の客体という扱いをうけることとなります。したがって、どれだけペットを愛していようと、そのペットにお金を贈与することはできません。近時、野生動物を原告とする訴訟が提起されましたが、やはり、訴訟としては受け付けてはもらえませんでした。
 ペットが病気や怪我をした場合、獣医師または動物病院の診療を受けることとなります。ここで人間と異なるのは、人間のような健康保険というものが存在しない、ということでしょう。したがって、その治療費は全額自己負担ということとなり、その金額は相当なものになってしまいます。なお、最近はペットの保険や共済も出てきていますが、これらには無認可のものもありますので、よく考えて契約する必要があるでしょう。
 さて、動物病院または獣医師の診療を受けることも契約の一種です。これは法的には診療事務の委託を行う「準委任契約」(民法第656条)といわれるものとなります。そしてこの契約が締結されることにより、獣医師または動物病院は「委任の本旨に従い善良なる管理者の注意をもって委任事務を行う義務(いわゆる善管注意義務)」を負うこととなります。この注意義務は、事務を担当する者、ここでは獣医師が、社会通念上一般に期待されている業務上相当な注意をもって行う義務を指します。獣医師は国家資格を持っていなければなりませんので、それを踏まえると相当高度の注意義務を負っているということができるでしょう。
 ペットの医療過誤ということは、その準委任契約により発生した獣医師が負担する債務(善管注意義務をもって診療事務を行う義務)が契約どおり履行されなかったということです。したがって、それにより損害が生じれば債務不履行による損害賠償を請求することができます。また、一般の不法行為による損害賠償請求と構成することも考えられるでしょう。いずれの場合も、「医療過誤」という事実の立証は、法的知識以外の専門知識が必要となりますので、非常に難しいものとならざるを得ません。
ペットの医療過誤による損害賠償請求で最も問題となるがその金額です。人間の医療過誤であれば、治療費や休業損害、その事故がなければ得られたであろう逸失利益などが請求できますが、ペットの場合には、原則としてあくまでそのペットの「物」としての経済的価値の賠償にとどまり、飼い主の精神的損害に対する賠償は、認められたとしても少額のケースが多いようです。愛すべきペットを失った飼い主の納得のいく金額を得ることは、現在のところ難しいと言わざるを得ません。
 具体的な請求方法は、?裁判外の和解・示談、?地方裁判所または簡易裁判所への訴訟提起、?裁判所への調停申立などが考えられます。
 なにはともあれ、問題が生じた場合には、最寄りの司法書士または司法書士会にご相談ください。

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